- 目次
せん妄、うつと認知症とは?
医療・ケアする場面において、認知症とせん妄、うつという言葉がよく聞かれます。しかし、
認知症とせん妄、うつは間違えて認識されやすいうえ、併存し得るということがより理解を
難しくしています。ここでは、認知症とせん妄、うつの類似点と相違点について考えていき
たいと思います。
せん妄と認知症について
せん妄とは、身体疾患や薬物などの影響により生じる意識障害の一種です。意識障害とは
「自分が自分であることがわかっていない状態」です。意識が障害されることにより、さま
ざまな精神障害や行動障害が誘発されてきます。一方、認知症とは「一度獲得した知的機能
が、脳の器質的変化により低下し、社会生活を送ることに支障をきたすようになった状態」
です。せん妄と認知症の決定的な違いとしては、せん妄は①急性に発症すること②数時間か
ら数日単位で症状が変化すること③「夜間せん妄」など時間によって波があることがあげら
れます。
うつと認知症について
うつ病とは、落ち込んだ気分が長く続き、生活に支障をきたす状態をいいます。うつ病と認
知症の大きな違いの一つに、発症のきっかけの明確さがあります。うつ病の場合は、何らか
のイベント以降に症状が発症する場合が多いですが、認知症の場合は発症のきっかけが不
明瞭なことが多くみられます。
せん妄、うつ病と認知症では共通した症状があり、鑑別することが難しい場合があります。
しかしながら、それぞれ治療やケアの目的が異なります。正確な診断により適切な治療・ケ
アを受けることが可能となり、患者さんやそのご家族が少しでも苦痛を軽減し、安心して生
活できるよう、関わる医療・ケア従事者がそれぞれの違いを理解しておくことが重要です。
認知症・せん妄・うつ病の比較
認知症
(アルツハイマー型認知症) |
せん妄 | うつ病 | |
発症
エピソード |
特にない | あり | あり |
経過 | 慢性的にゆっくり進行する。
1日を通して安定している |
夜間に増悪する傾向がある「夜間せん妄」
1日のなかで変化がある |
単発で治癒することもあれば、再発を繰り返し慢性化する場合もある。日内変動もみられる |
症状
維持時 |
月~年単位 | 数時間~数週、数カ月 | 数週~数カ月 |
意識 | 正常 | 変動 | 正常 |
注意 | 正常(末期をのぞく) | 維持・転導性(注意を維持したり、他に向けたりできない)の障害 | 障害され得る
(維持が困難) |
記憶 | 近時記憶(分~日単位の記憶)から、遠隔記憶(年~十年単位の記憶)が障害される | 即時記憶(数秒前の記憶)~近時記憶が障害される | 自覚症状としての記銘力低下はあるが、記憶の障害は伴わないことが多い |
見当識 | 不良 | 意識障害によって変動する | 正常 |
思考 | 内容の貧困化 | 無秩序 | 正常あるいは抑制 |
知覚 | 異常なし(末期を除く) | 視覚性の障害が多い | 多くは異常なし |
引用・参考文献:
編 三輪高市・中村友喜他(2017)『レシピプラス 要点ガッチリ!「認知症高齢者」対応力』.南山堂.pp.019-021.
アステッキの教材なら「忙しいあなた」でも資格取得を目指せる。
アステッキの教材を利用した多くの方が資格試験に合格されています。
その理由は徹底した教材作りへのこだわりに隠されています。
あなたも知識の幅を増やしたり、就職の選択肢を広げたりと自身の可能性を広げてみませんか。