忘れるって幸せよ By 毎日がアルツハイマー

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『毎日がアルツハイマー2』をみて

神戸元町映画館で上映されていた毎日がアルツハイマー ザ*ファイナルをみてきました。

多様化する死にめぐる問題や倫理観について改めて考えさせられる作品でした。

さて、今回は、そのときに購入したDVD『毎日がアルツハイマー2』から感じたことをまとめます!

『毎日がアルツハイマー』シリーズは、アルツハイマー型認知症の母親と、自宅で介護する娘さんの日々をつづったあたたかいドキュメンタリー映画。

娘さんは、映画監督をされている関口祐加さんで、親子、親戚、医療・福祉関係者との日々や、認知症ケアに携わる他国の方との交流を通じてみえてきた世界を、観客の心に問いかけるように描いてくれています。

お母さんも、介護している関口監督も、笑ったり、怒ったり、心配したり、そしてその出来事さえもまた笑いに変えてしまえるような温かい日々が続いていきます。

♦忘れるって幸せよ

これは、認知症の母が映画の中で言った言葉。

忘れるって幸せ  いやなこともつらいことも忘れる

 いいことは覚えてるんだよ~

 自分が忘れるということは覚えてる でも何を忘れたか覚えていない

 いいことだけちゃんと覚えてる

 いいことだけを覚えていたいっていう本能なんじゃないの~?

こんな言葉、長く病院で勤務してきたけれど聞いたことがない。

忘れることが幸せだ、という言葉に、自分の中に合った固定観念がガタガタと崩れ落ちました。

忘れること、できなくなることをサポートして笑顔で過ごしてほしい、ずっとそう思っていたけれど、忘れることを笑顔で受け入れて、なお、考え方を変えて前向きにいきている姿に力強さを感じました。

もちろん、みんながみんなそうではないし、この言葉がでてくるには、その人の人間性や価値観、環境、死生観、いろんなことが要素としてあるのだろうと思います。

そして、認知症になっても、いくつになっても、こうして自分なりに考えながら成長していくことができるということを教えてもらった場面でした。

老夫婦

♦逃げ道をつくるケア

パーソン・センタード・ケアってご存知でしょうか?

イギリスの心理学者トム・キットウッドが提唱した認知症ケアの理念です。ヨーロッパではこの考え方が主流であり、日本でも認知症ケアを学ぶ上で欠かせないものになっています。

認知症の人を一人の人として尊重し、その人の視点に立って理解しケアを行うという考え方です。

映画の中で、関口監督はパーソン・センタード・ケアを知るためにイギリスへ行きます。

パーソン・センタード・ケアを実践している施設の方が言われていました。

『認知症の人の取りつくろい行動は、自分を守るための制御システムなのです』

なにか失敗したり、不安があるときに、認知症の人が取りつくろう行動をとることがあります。

失敗を何かのせいにする、知らないことを隠して知っているようにふるまう、などの行動ですね。

そのような行動は、記憶障害がもとになっている受け入れられない現実から目を背けたい、という自己防衛システムなのです。

現実を突きつけられ、傷つくのを避けるために、認知症の人にとっては取り繕いは必要なことなのです。

「なぜこんなことしたの?」「それはちがいますよ」と正しさで説得させるのは、傷口に塩を塗るケアなのですね。

間違えても、失敗しても、うまくごまかしてあげるケアが大切なのです。

「なるほど、こうしようとおもっていたのですね」と受け入れながら、「こんな方法はどうでしょうか」と話をかえてみる。

認知症の人の視点に立つと、おのずと、人として尊重できるケアができるのだと思います。

♦ヒストリーからヒントを見つける

看護師としての経験から

認知症の人の行動には何か意味があることが多く、その意味を知るにはその人の生きてきたヒストリーを知ることがとても重要です。

看護師である私の経験です。患者は認知症があり、緩和ケアを受けている80代女性です。

夜中になると不穏になり、だれかの名前を大声で叫ぶが、家族の名前ではない。

ご家族にそのことをお伝えすると

「その名前は、3歳で亡くなった養女の名前です。母は大事にその子を育てていましたが、ある夜、突然、病で亡くなりました。

でも亡くなったとき、母は気丈にふるまい、その後もその子のことをあまり語りませんでした。こんなに悲しみを抱えていたなんて…」

と言われました。

その話をきいて以降、夜間同じ状況になったときに「大丈夫、いい子で寝ていますよ」と声をかけると「ああ、よかった…そう…ありがとう」と落ち着くようになりました。

看護師をしていると、家族からきくその人の人間性や価値観、職業などの中に、大きなヒントが見つけることが多くありました。

探偵や捜査官になったような気持ちで楽しみながら、なぜ?どうして?どうだった?とチームで考えていく。

それが、その人らしさを引き出すケアにつながったときの喜び、導きだすまでの苦労、

本当に、認知症ケアのやりがいを感じる充実した毎日でした。

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認知症でも、周りに受け入れてくれる人がいれば、こんなに生き生きと過ごすことができるんだ…

それが私がこの映画を見た率直な思いでした。そして、これは実現ができると思いました。

そのためには、もっと認知症について知ってほしい、高齢者や認知症の人を身近な存在として受け入れるシステムが必要だと思います。

次回は、『毎日がアルツハイマー ザ・ファイナル』をみて感じたことをまとめていきたいと思います。

 

 

 

 

 

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